大判例

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最高裁判所第一小法廷 平成5年(行ツ)20号 判決

鳥取県米子市米原五丁目二番三二号

上告人

高林興産株式会社

右代表者代表取締役

高林健治

同所同番同号

上告人

高林機材株式会社

右代表者代表取締役

高林健治

同所同番同号

上告人

高林鉄道資材株式会社

右代表者代表取締役

高林健治

同所同番同号

上告人

高林通商株式会社

右代表者代表取締役

高林健治

鳥取県米子市夜見町二八四五番地

上告人

高林工業株式会社

右代表者代表取締役

高林健治

鳥取県米子市東町一二四番地の一六

被上告人

米子税務署長 牧田宗孝

右当事者間の広島高等裁判所松江支部平成四年(行コ)第二号課税処分無効確認請求事件について、同裁判所が平成四年一〇月三〇日言い渡した判決に対し、上告人らから全部破棄を求める旨の上告の申立てがあった。よって当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人らの上告理由について

本件課税処分無効確認請求はいずれも不適法であるとした原審の判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、独自の見解に立って原判決を非難するものにすぎず、いずれも採用することができない。

よって行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 大堀誠一 裁判官 味村治 裁判官 小野幹雄 裁判官 三好達)

(平成五年(行ツ)第二〇号 上告人 高林興産株式会社 外四名)

上告人の上告理由

一、法令違背及び法令解釈の誤りについて

原判決一2の前段「右事実関係の下では、前記再更正は外観上は再更正の形式をとってはいるものの、当初更正の手続上の瑕疵を是正し、改めて更正をする前提手続きとしてなされた更正の取消処分というべく」と云っていますが、これには左に述べる如く原判決の再更正の前提である昭和五一年六月三〇日の更正には法令違背があり、又原判決は再更正の解釈を誤っています。

ア、法令違背について

1.上告人らはいずれも青色申告の承認をうけた法人で法定期限内に確定申告、納税をした。

国税通則法第一六條、法人税法第一二一條

2.上告人らの昭和四九年五月末期、昭和五〇年五月末期の確定申告につき昭和五一年三月頃、米子税務署より調査のため上告人らの親会社である高林産業株式会社に来社され、親会社の帳簿から上告人らが親会社に支払った負担金を調査された。上告人らの借入金については取引金融機関に、又保証料率については信用保証協会に書面で照会された。負担金借入金とも上告人らの帳簿書類は調査をうけていない。

3.昭和五一年六月三〇日付で上告人らに対し「右負担金は寄附金と認定する。借入金は親会社の保証があるから保証料相当額は負担金より減額し寄附金の損金不算入額を計算し申告所得額に加算する」との更正通知がきた。

甲第一号証一~五、甲第二号証一~五(以下一〇号証まで鳥取地方裁判所へ提出分)

以下右の更正を第一次更正という。

4.右の第一次更正は明らかに法人税第一三〇條一項の強行規定に違背する。

法人税法第一三〇條一項によれば「税務署長は、内国法人の提出した青色申告書に係る法人税の課税標準又は欠損金額の更正をする場合にはその内国法人の帳簿書類を調査し、その調査により当該課税標準又は欠損金額に誤りがあると認められる場合に限り、これをすることができる」となっている。

イ、法令解釈の誤りについて

被上告人は上告人らの帳簿、書類を調査していない。

1.これに対して上告人らは昭和五一年七月六日から昭和五一年七月一七日までに国税不服審判所へ第一次更正に対して第一次の審査請求をした。

甲第三号証一~五

2.税務署長は同年八月七日付を以て上告人らと記載した最初の四名に対し再更正の理由として「昭和五一年六月三十日付の更正通知は手続上誤りがありましたので次の様に加算減算して再更正しました」との再更正通知書がきた。

以下これを第二次更正という。

甲第四号証、甲第五号証

上告人高林工業株式会社に対しては昭和四九年五月末期の再更正通知書(米法第三九條)は昭和五二年二月九日付であり、その理由として「貴社に対する昭和五一年六月三〇日付の更正通知は国税通則法第二八條の規定に照らし、適法を欠くので同法第二六條の規定による再更正を行ったものです。」となっている。

高林工業株式会社に対する昭和五〇年五月末期の再更正通知書は「米法第四〇條」で同趣旨のものと思われるが紛失の為提出できない。

3.この国税通則法第二六條とは「税務署長は、前二條又はこの條の規定による更正又は決定をした後、その更正又は決定した課税標準等又は税額等が過大又は過少であることを知ったときは、その調査により、当該更正又は決定に係る課税標準等又は税額等を更正する。」となっている。

又国税通則法第二九條二項では「既に確定した納付すべき課税を減少させる更正は、その更正により減少した税額に係る部分以外の部分の国税についての納税義務に影響を及ぼさない」となっている。

同條第三項によれば「更正又は決定を取消す処分又は判決は、その処分又は判決により減少した税額に係る部分以外の部分の国税についての納税義務に影響を及ぼさない」となっており、減額更正及び判決の効力を規定している。

4.前記再更正通知書には何れも税務署長の職権による第1次更正処分の取消であるとの記載もなく、税務署長の法廷における主張もないのに原判決は判決理由の中で「前記再更正は外観上は再更正の形式を取ってはいるものの、当該更正の手続上の瑕疵を更正し、改めて更正をする前提手続としてなされた更正の取消処分というべく」といっているが、これは再更正の拡大解釈であり、上告人らが国税通則法第二六條、同二九條二、三項に示した法令の解釈を誤っている。

減額再更正等により、納付すべき税額が減少するのはもとよりであるが、それは前の申告等の効力をさかのぼって消滅させるまでの力をもっているわけではなく、したがって前の申告等に基づいてなされた納付や徴収部分が無効であるということにはならないことを明らかにしたものである。

更正、及び取消しが恣意的に自由に行はれてもよいとは考えられない。

上告人らは手続保障の恩典をうけている。

以上のべた通りであるから、第一次更正を行う為の前提である調査手続上の瑕疵は再更正で消えることはない。

この点原判決は再更正に対する法令の解釈を誤っている。

5.この減額再更正に対する判例としては左のものがある。

最判(二小)昭和五六年四月二四日判決云渡、民集三五巻三号四三一ページ

(判旨)「申告に係る課税につき更正処分がなされたのち、いわゆる減額再更正がなされた場合、右再更正処分はそれにより減少した税額に係る部分についてのみ法的効果を及ぼすものであり(国税通則法第二九條二項)それ自体は再更正処分の理由の如何にかかわらず、当初の更正処分とは別個独立の処分ではなく、その実質は当初の更正処分の変更であり、それによって税額の一部取消という納税者に有利な効果をもたらす処分と解するを相当とする。

そうすると、納税者は右の再更正処分に対して救済を求める訴えの利益はなく、専ら減額された当初の更正処分の取消しを訴求することをもって足りるというべきである」となっている。

6.上告人らの第一次審査請求は上告人として記載した最初の四名に対して、昭和五一年八月三一日付裁決で却下された。

上告人高林工業株式会社分は後述の通り昭和五二年六月三〇日付裁決で棄却された。

上告人らは第二次更正に対して第二次審査請求を行ったが、昭和五一年九月二七日付で上告人ら最初の四名分だけは却下された。

上告人高林工業株式会社分は昭和五二年六月三〇日付棄却された。

二、更正処分の無効原因について(重大かつ明白なる瑕疵の存在の主張)

1、右一、ア、1、ないし4、に述べた如く昭和五一年六月三〇日付の上告人らの昭和四九年五月末期、昭和五〇年五月末期の確定申告に対する更正については青色申告制度を根本から覆す程重大なる瑕疵があり、その明白性については再更正をした税務署長自身が認めているところである。

2、行政処分違法性判断の時期は処分時であることは判例、学説共通説となっている。

つまり上告人らの昭和四九年五月末期、昭和五〇年五月末期の確定申告に対し更正通知の発行せられた昭和五一年六月三〇日である。

3、上告人らの事業は継続しており、更正もそれに伴っている。

昭和五一年六月三〇日以降の更正(六月三〇日分も含む)は無効な課税処分の上に構築せられた砂上の楼閣であり、全て無効である。

三、判断の遺脱(民事訴訟法第四二〇條第一項九号)及び理由不備(民事訴訟法第三九五條第一項六号)の違法について。

原判決一2の後段で「(ちなみに乙第一ないし第三号証によれば、上告人らは別途前記再々更正処分の取消しを求めて提訴したが、いずれも請求を棄却する旨の判決が確定している)」となっているが、上告人らは判決に不服があるので最高裁判所の終局判決に対して敢えて再審を求めた次第である。

ア、1、原判決には左の通り判断の遺脱、理由不備の違法がある。

被上告人は第二次更正で第一次更正を取消した格好にしておいて(但し高林工業株式会社の第二次更正は昭和五二年二月九日)今後は上告人ら五名分の帳簿書類を調査の上昭和五一年八月三一日付で上告人らの最初の四名に対して第一次更正処分と同じ更正処分を行った。

これを第三次更正という。

甲第六号証及び第七号証

上告人高林工業株式会社に対する第三次更正は昭和四九年五月末期のもの(米法第四八号)は昭和五二年二月一五日付である。昭和五〇年五月末期のものは同日付米法四九号と思はれるが、紛失の為提出出来ない。

2、第三次更正のための調査の時五一年五月末期の確定申告書が提出してあったので、これに対しても昭和五一年一二月一〇日付で更正通知がきた。

第三次更正と昭和五一年五月末期の更正を合わせて第三次審査請求をしたが昭和五二年六月三〇日付で昭和四九年五月末期から昭和五一年五月末期までの審査請求は全部棄却するとの裁決がきた。

3、昭和五二年一一月二日付で昭和四九年五月末期から三事業年度分の更正に対し鳥取地方裁判所へ提訴した。

事件番号昭和五二年(行ウ)第六号で、事件名は「法人税額等更正処分取消請求事件」である。

第一次更正と第三次更正の税額が多少違うのは裁決で第三次更正が若干減額となったためである。

4、その後上告人らに対し昭和五二年五月末期及び昭和五三年五月末期の事業年度分に対する更正があり、又上告人高林興産株式会社、高林工業株式会社の昭和五四年五月末期及び昭和五五年五月末期の事業年度の更正がありこれ等は昭和五二年(行ウ)第六号に併合を求めた。

併合事件番号は原審昭和五六年(行ウ)第一号である。

これらは鳥取地方裁判所で昭和五七年六月二四日付で棄却された。 乙第三号証

広島高等裁判所高松支部へ控訴したが昭和五九年一月二五日付で棄却された。 乙第二号証

昭和五九年二月九日付を以て最高裁判所へ上告したが昭和六三年三月一日付で棄却された。 乙第一号証

5、最高裁の終局判決に対しても不服があるので左の通り再審を求めたが何れも却下された。

〈省略〉

6、右の再審却下についても尚不服があるので民事訴訟法第四二七條第二項により「法人税額等更正処分取消請求事件」を「課税処分無効確認請求事件」と不服の理由を変更し、被上告人が昭和五一年六月三〇日付で発行の、上告人高林興産株式会社に対する昭和五一年六月三〇日付の更正通知書、同年八月七日付の再更正通知書、同年八月三一日付第三次更正通知書及び上告人代表者のメモを証拠申請の上平成二年三月一〇日付にて再度最高裁判所へ再審の訴えを提起した。

7、再審として取上げるか否かは最高裁判所の職権調査事項である。

再審の結果再審の訴えが訴訟要件を欠くときは前四回と同じく訴えは却下され、再審請求に理由がないときは棄却判決となる。

8、最高裁判所より上告人の再審訴状に対し平成二年二月一二日受付にて「平成二年(行ニ)一四号訴状として立件」と記入した書類と共に平成二年四月五日付で「本件を鳥取地方裁判所に移送する。」との決定通知がきた。

(証拠番号平成四年五月一五日付甲第九号証、甲第一〇号証)

9、平成三年一一月一九日鳥取地方裁判所へ前訴「法人税額等更正処分取消請求事件」の原告と同じ五名が共同訴訟人となり「課税処分無効確認請求事件」として提訴した。(行政事件訴訟法第三八條一項)

鳥取地方裁判所で平成四年五月二六日却下された。

10、平成四年六月五日付で広島高等裁判所松江支部へ同趣旨の控訴をしたが平成四年一〇月三〇日付で棄却されたので上告に及んだ次第である。

イ、裁判所法第四條によれば「上級審の裁判に於ける判断は、その下級審の裁判所を拘束する」となっている。

ウ、又上告人らの控訴状には控訴理由を記載の上、控訴の趣旨として「課税処分無効確認」を求めているのに、これについては何等の判断も示さず、原判決は前訴の「法人税額等更正処分取消請求事件」の各裁判所判決乙第三号証ないし乙第一号証を示しただけでは判断の遺脱、理由不備の違法となる。

以上は判決に影響を及ぼすこと明らかなる法令違背があるので、控訴審判決の取消、課税処分の無効確認を求め、尚訴訟費用は被上告人の負担とするとの判決を求めます。

以上

別紙 更正通知書受領状況 添付

別表

更正通知書受領状況

〈省略〉

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